心の動きを把握する

感情モニタリングを続けていると、「心」と一言で言っても幾つかの「層」からできていることが実感としてわかると思います。反応(直接知覚)、感情、記憶、思考、意識セット、そして行動。それらの動きが複合的に動作して成り立っている。しかも、普段意識的に把握できている部分は、極一部で、多くは意識されないまま動かしていたことに気がつくはずです。

こういった心の動きは、繰り返されることで学習されていきます。癖や性格といった形で現れてくるのです。何も手を加えなければ、「不快」なものを避け、「快」は強化されるように学習されていきます。

更に、感情は(脳内の反応も含めた)反応を学習した結果と言えますし、思考や記憶も学習した結果、先入観や経験といった形で集積されていきます。

そのようにして人間は学習し成長するのですが、意識されないまま野放図にしてしまうと、間違った形で学習し、自分自身にとっては本当は良くない心の動きを繰り返してしまうことにもつながります。

感情モニタリングは、そのような心の動きを、一呼吸おいて中断した上で、俯瞰的に言語化と注意を向けることで、意識の下に露わにする活動と言えます。

元々、人間には、反応(直接直接)、感情、記憶、思考、意識セット、行動についての能力が備わっていて、成長の中でより良い心の動きを学習している。

局所的に「不快」を避け、「快」を好むことで誤った対応を学習してしまうけれど、意識してみればそれが不合理だと判断する能力も備わっています。ある程度の論理力は現代人であれば日常的に訓練されて身についているからです。逆に、意識しなければ、その力が働かず、長期的には有害な考えや感情、癖に陥ってしまいがちなのです。

さて、原理を説明したところで実践的な話をしたいと思います。「誤った心の動き」ですが、現れてくる形は複雑な形をとるものの、それぞれの心の「層」単位の動きは単純です。誤作動していると感じた時に、モニタリングを行い、動きをコントロールするポイントを押さえて更に見ることで、「誤った心の動き」を発見することができます。

① 反応 注意を向ける、注意を向けない

② 感情 喜び、恐怖、不安、愛情など

③ 記憶 忘れるー思い出す

④ 思考 理由をつける、分割する、置き換える

⑤ 意識セット 受容ー拒絶 など

⑥ 行動 攻撃、助けを呼ぶ、逃げる、耐えるなど

やらないといけないことから目を逸らす、人のせいにするといった行動は、誰でも行ったことがあるのではないかと思います。

自分で意識しながら、一時の逃避や強がりとして言ってみる分には大した害がないのですが、意識の光が射さないまま、依存性物質に逃避したり、親や上司のせいにしてしまうことが癖になると大変です。適切な解決法を取れず現状を改善できないまま、ひたすら不適切な行動をとり続けることになります。

もちろん、合理的でない解決法だからと言ってすぐに不幸になるわけではありません。例えば、「神に祈る」。どうしようもない時に祈っても奇跡が起きる保証はありません。それでも祈るのは、「助けを呼ぶ」学習が呼び起こされて、誤ったシュチュエーションで使われているからです。一般的に、超越的存在を父とか母に喩えることがその証左です。

しかしながら、そのような非合理的な行動でも、すがることで苦悩を軽減させることができるでしょう。論理的でないかはといって直ちに不適切とは限りません。

重要なのは、無意識的にしている、論理的でない「実生活で有害な心の動き」を検出し意識下におくことです。

モニタリングすることに何か変えようという意識は不要です。むしろ、ありのままの動きの検知を阻害するので有害かもしれません。ですが、更に、速やかに健全で論理的、合理的な心の動きに変えていく方法があります。次はその方法を説明したいと思います。